- 作者: 佐々木 俊尚
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/08/07
- メディア: 単行本
ノンフィクション小説のような文体で、一気に読みました。おもしろかった。
インターネット側とリアル社会との対比を様々に紹介しているが、なぜだかどうしても筆者がインターネット側に立ってその場所から弁証法を使ってネット民主主義を正当化しようとしているようにしか受け取れない場面が多々あります。つまり筆者の視点がそもそもフラットでないと感じてしまう読者が多いのではなかと心配してしまうのです。
そもそもこの本の書き方自体が、時系列や引用、そしてソースを意識的に大量に提示することで持説を展開していくという手法をとっていて、それはブログやトラックバックをたどっていくことで一つのストーリーが形成されてくるネットコミュニティの文脈理解によく似た手法になっています。これもたぶん筆者は意識してのことでしょうが、文体に違和感を覚えて読了せずに本を閉じてしまう人がいるとすれば筆者の提示した問いかけに自問することもないわけで、それはあまりにももったいない。
この本が上稿されたの2007年5月上旬。構想から2年以上かかったとのことです。書籍というフォーマットは出版された時点で当然陳腐化されてしまうものだけに、この「著書」がモニタ上でリアルタイムに読むことができたなら、もっとおもしろかったのに、という感想は筆者にとても失礼かもしれません。
昔、河上イチローの著書を読んだことがあったのを思い出しましたが、あんなことになっていたとはこの本を読むまで知りませんでしたし、日コン連のエピソードなどもう忘れかけていた話題もあって、あのときと今の自分と、インターネット関連の仕事をしていながらもう忘れかけていた「ちょっと昔のこと」を振り返って自分とネットとの距離感がいつのまにか変化してきている事実に気がついて、いろいろ考えが彷徨ってしまいます。。