小説 上杉鷹山を読んだ。
実は小説といえば読むのは翻訳モノが専門です。だけど以前から鷹山(YOZAN)の名前だけは知っていたので気まぐれで読んでみました。
本書は、歴史小説というよりリーダシップ論や経営論で有名です。
「ウエスギ・ヨーザンは、私の最も尊敬する日本人です」と語ったのは故ケネディ大統領やクリントン大統領だそうで、むしろ日本よりも国外で有名な日本人かもしれません。
「どんな絶望的状況にあっても複眼の思考方法を持ち、歴史の流れをよく見つめるならば、閉塞状況の中でも、その壁を突破する道はある。」と彼は説きます。
人や組織は何か難問にぶつかると改革論や精神論を持ち出し、その反面いざ意見を求めると今度は皆がそれぞれ自分のかかわる分野については注文やできない理由をつけて改革の対象から外そうとするもの。いわゆる総論賛成、各論反対というやつですが、これにどう治憲(のちの鷹山)が取り組んでいったかがテンポよく描かれます。この難問を解決していくための施策をどのように実行していったか、その順番が大切なのです。
何かを変えるとき、特に人の気持ちを変えるには、手順とある程度の時間が必要なのだということ。
ただ一方で、頻繁に筆者自身が主語としか思えないような、急に現代に戻った書き方で企業社会に例えてみたり、本文の流れを無視した脚注とも思えるコメントがあったりするのはちょっと興ざめ。しかし見方を変えれば、表現や形容詞の使い方が現代風な本書は、自分のような歴史小説初心者にとっては読みやすい良書でした。